開催報告

自然のかたち、人工のかたち


2023年12月26日()に開催された第3回ワークショップ自然のかたち、人工のかたち 」の開催報告です。

登壇者の発表内容 

ワークショップ当日の撮影配信動画をこちらで公開しています。:3回「自然のかたち、人工のかたち

対話の概略 大谷美沙都佐藤淳 (司会:福永真弓)

〇「自然である」という定義はお二人にとって何か?

大谷先生

人が手を加えずとも自明な結果になること。しかしその見方が人間主観にならないように疑うことも大事。

佐藤先生

現象の中に、ある程度のランダムさがあること。ジャングルの中にいるとわかるように、せせらぎや木漏れ日のようなルールがありつつもランダムなこと。

 

〇力学的最適化とはなんだろうか。

佐藤先生

・力の形状に合わせたデザインをする事。例えば、600m のスカイツリーを創るためにはどの程度の強度が必要か、それを最適化すること。

大谷先生

・植物においては、落葉などのように構造を後から捨てて切り離すことが出来る。生き物にとっての最適化の目的とは、常に変わり続けるのではないか?植物がなぜ今の形に行きついているのか、本当にわからないことが多いが、ある程度の妥協点でたどり着いた形態が現在の形なのではないだろうか?

佐藤先生

・建築では途中からすり替えることや補修を完璧に行うことは難しいが、付け足して機能も増やしていくことはこれからの建築では可能であって、そこから機能美が生まれてくるのではないか?植物が今後形を変えていく可能性はあるのだろうか。我々は植物を模倣することもあるが、どういう方向へ向かっていくのか

 大谷先生

・ツタなどの一部の生物種では起こりうる。細胞同士が変化しあう性質をもつものもまれにある。

 

〇植物が持つような、無駄な余白をもっていることが生存にとって有利なのではないか?またそれを再現できるが、人間の最終目的なのではないかとも考えられる。それらを踏まえた上で、社会がどうあるべきなのだろうか。

 大谷先生

・植物の可能性は、全ての概念に繋がると考えている。細胞という最小のユニットが無限に組み合わされることで、何かを構築することが可能になる。これは家や町、暮らしなどといった全てに広がるのでは?

 佐藤先生

・さらには葉緑体というエネルギーユニットも備える、最強のコンセプトなのでは?―福永先生・都市計画にも繋がるところもあると思う。町にどんな変化を加えると、そこでどんな進化に繋がるか、シミュレーションは可能であるし、植物同士がどんな更新をしているかなども活用できるのでは?というか我々は、自然を目指しているが目指す方向がずれ始めているのでは?最近の強すぎるガラスや、台風に強すぎる建物など、完璧すぎる気がしている。自然を感じながら生きていくとは、たまにモノが壊れたり、揺れたりする。そういった余裕も大事なのではないかと常に考えている。

 大谷先生

・たしかに、どっちつかずなスタンスも大事なのかもしれない。植物も 7,8 割の生き残りが今生きている種に繋がっている。

 

◇まとめ   福永 真弓

自然とは?という抽象的な問いから始まったが、それぞれに応答可能性があることの意義であったり余白があることの余裕が、人間以外の始点だったりあり方を考えさせてくれるのでは。

視聴者アンケートの結果

ワークショップ終了後、アンケート (Googleフォーム) への回答を求めた。

回答者は、「教員・研究員」27.3%、「学生」42.4%、「学校職員」15.2%と、回答者全体の9割が学生や教育関係者であった。

・全体の満足度は「満足」「まあ満足」で占められていた 

図2. 「ご自身の研究倫理についての捉え方がこれまでと変わったと思いますか?」


参加者からの感想として、以下のようなものがあった。

・分野の違う視点の組み合わせが良い効果を生み出していました. 

・単純に面白い 

・生命と建築という一見関係のなさそうな分野の融合に心躍ったから。異なる分野のプロフェッショナルである先生方のお話を聞いたことで、新たな価値観や今後人間としてどのように生きていく必要があるのかを考える機会となったから。 

・異分野融合の話題に引き込まれました。 

・楽しく難し過ぎない内容でよかったです。私は植物の研究を行っているが、対話の中で話されている疑問や観点が私の中で考えてこなかった点があり、改めて自分の研究を見直すいい機会となった。これまで気づかなかった視点ややり取りの中で講演者の先生方自身も互いに触発されていく様子が素晴らしかったです。 

・研究者お二人の話がインタビュアーさんの解説や白板の絵によってとてもわかりやすくなっていたから。 

・分かりやすい例を挙げたり簡単な言葉で教えてくれて面白いです。 

初めて参加しましたが先生方のお話の内容とグラフィックレコードで理解が深まり、とてもためになったため大変満足しております。自然と人工についてや、科学的な知見を社会にどう生かしていくべきかを様々な観点からじっくり考える有意義な時間にできたから。 

・しゃべったことのある先生(大谷先生)が何を考えているのかが聞けたし、グラレコの方の絵がきれいで先生たちの話を聞くうえでの助けになりました。 

・植物や生物の存在形態や、人間社会への新たな応用性、またすべての命の中の、特に命の間の、人間と自然の間の応答可能性による様々な「コミュニケーション」にもとづく都市計画やライフスタイルの変革の可能性を考えさせられました。 

・建築学的視点から自然を見る機会がないため。進め方がスムーズ、対談でうまく植物と建築がつながるところが面白かった。 

・植物の形は環境適応で作られたのか、DNA で決められているのかについての議論が面白く楽しめました。 

・お二人ともそれぞれの高い専門性を持ったうえで、お互いの専門領域に対する尊敬と理解を示した対話でとても面白かったです。司会の先生の内容を咀嚼したうえでの深い問いかけも議論の助けになっていたかと思います。 

・前半のグラレコは事前収録されたのでしょうか?お二人の「応答可能性」とグラレコのおかげで、一般市民であるわたしでも議論からの気づきを得られて楽しかったです。ご研究についてのプレゼンを聞いているときはたいてい、後半に行くにしたがって議論が専門的になり、対話となると互いの投げかけがかみあっているのかかみ合っていないのかわからなかったりして…おいて行かれることが多かったのですが、グラレコの特にカラフルな単語とイラストレーションのおかげで高い壁をあまり感じずに、感覚で「ああこういう話だったな」と追いつくことができました。 

・二人の話は一見異なっているようで,自然の美しさ・精密さなどという点で共通項があり興味深かったため. 

 ・総じて、テーマの設定がかなり良かったこと、ファシリテーションとグラレコの駆動感が視聴者に刺さっている印象。これはすばらしいと思いました。 


また、参加者の印象に残ったセッションは、「対話」が8割を占めていた。

対話」を選択した理由としては以下のようなものがあった。

・異分野交流の場合何気なく使う言葉の定義や議論の前提が違うことでかみ合わないことが多々ありますが、そうしたところを固めてからお互いの領域のアナロジーを深めていくところが良かったです。 特に印象に残ったのは植物は最適化する目的がフェーズによって変わる点です。これから思ったのは昔の日本家屋などはふすまや仕切りを取り外すことで個室から広間を作ることで生活の場を冠婚葬祭の場に作り変えたり、部分的に目的によって場を最適化する余地があったのかなと思いました。

 ・先生方がそれまで互いに大きく異なる領域の専門分野をお話しされていたのにもかかわらず、対話で互いの方向性の共通点を、言葉を絶やすことなく積極的に見出そうとしておられたのが印象的でした。対話からまとめへの流れがシームレスでしたのですべて総括しますが、「余白を残して 8 割で生きる」こと、「ゆらぎやを許容し、壊れた時や孫世代やのことを前もって考えて」建築材料を残すという視点は、持続可能な社会を作り出すために、自然や我々の過去から取り戻したい考えだと感じました。


その他印象に残ったセッションとして、次の図のようなものが挙げられた。

全体的な感想やご意見として、以下のようなものがあった。

・企画がプロフェッショナル 

・グラフィックレコーディングによって難しい話題も頭に良く入ってくるところに感動 

・画面に映る日本語がよく見えないです。(要改善) 

・グラフィックレコーディング は専門的なところもあったが、視覚化されてわかりやすいところもあって興味深かった。 

・福永先生の進行がうまくお二人の話をまとめたり引き出したりされてとてもわかりやすかった。グラレコが画面でよく見えなかったのでまとめにグラレコの完成版を紹介する時間があってもよいと思った。グラレコやファシリテーションのワークショップもあったら参加したい 

・今回は形に絞って、自然なのか力学なのか議論したので、まとまっていて素直に楽しめました。次回以降も短時間なのでテーマを絞った議論を期待致します。 

・グラレコは存在は知っていましたが、講演で運用される様子を初めて拝見しました。自分では取りこぼしていたことも記録されていたのはもちろん、視覚情報でのメモの印象がすごく強く、自分でもできるようになりたいと思いました。 

・今回「植物オプト」でお世話になった大谷先生のご紹介で、拝聴のご縁をいただきました。福永真弓先生には旧大阪府大の環境報告書作成の際にお世話になっており、当時と変わらぬ軽快なトークとご健在なお姿も拝見できて、思いがけない喜びでした。恥ずかしながらこれまでこのようなワークショップが開かれていたことを存じ上げなかったのですが、研究畑の方だけでなく、小中高生含めた一般市民の方へ広く知られてほしい活動だと思いました。

・今後もご盛会ご活躍を祈っております。 

・PPT 等資料の配布か公開 を希望