* * * 研究倫理を刺激的かつ根本的に考えるためのワークショップ * * *

※全てのワークショップは「グラフィックレコーディング」として記録され、このサイト上でも公開しています。

【NEWS】

2022年度第2「想像x科学x倫理ワークショップ」開催

1214日()14:30~【循環とは何か】


伊藤耕三先生 x 岡部明子先生

1.戸惑いとためらいの共有から、想像の交差へ

 わたしたちの日常は科学技術に埋め込まれ、なめらかにつながっています。

 たとえば、食卓の上にはゲノム編集や物理化学によって新しく生み出された食品が並び、わたしたちの身体になっています。また、一からゲノムを人工的に組んだ合成生物も地球上の生態系に加わり、わたしたちの環境をかたちづくろうとしています。

 バイオセンシングによって、自分がどのような体調やストレスのなかにあるのか、運動不足なのかどうなのか手軽に知ることができます。腕につけるデバイスで日々、健康管理を行っている方もいるでしょう。デジタルコミュニケーションは当たり前になり、仮想空間と日常空間の行き来も頻繁になりました。わたしたちの感覚を拡張する科学技術はいっそう進み、触覚を利用した新しいコミュニケーションも模索されようとしています。

 さらに、拡張された身体や五感のもと、人工物や情報となめらかにつながった都市も、大きくその姿を変えようとしています。情報が基盤インフラとなる都市が形成されつつある現在において、これまでの都市像とは異なる都市の姿、都市らしさとは何かが改めて問われているのです。

 

 当然のことながら、こうした科学技術の研究には、いつでも戸惑いやためらい、疑問がつきまといます。研究者として立ちすくんでしまうことも少なくありません。

 たとえば、ゲノム編集をされた生きものが栽培品種として広がり、合成生物が加わって微生物の世界から変容していく地球の姿をどう考えればよいのでしょうか。わたしたちを支えてきた進化というプロセスを、わたしたちはどのように変えようとしているのでしょうか。あるいは、これまでの地球の進化系統樹を変えないことを基準にするならば、どの程度、その地球に戻そうと試みるべきなのでしょうか。

 たとえば、拡張された身体や感覚のなかで、わたしたちの身体性、人間であることはどう変わっていこうとしているのでしょうか。そのとき、健康とは何を意味するのでしょう。わたしたちの安寧とは、幸福とは、何を基準にすればよいのでしょうか。サイボーグとなりつつある人間の身体、身体を超えて拡張される感覚群は、人間であるという基準自体をどう変えようとしているのでしょう。あるいは、人間らしさはどのようにあれば保全できると考えるべきなのでしょうか。


 地球や人間といった大きな枠組みが揺らいでいること、科学技術によってその揺らぎが一層大きくなっていることは、誰よりも科学技術を研究する人びとが経験しています。それゆえに研究者は戸惑い、立ちすくみ、問いを模索しようとします。同時に、「のぞましくない」「踏み越えるべきではない」ものについて、異なる立場から議論をおこなうことの重要性を日々、感じています。研究者だけでは答えの模索もできませんし(専門知と科学的解の限界)、社会に開いても答えが明確にあるわけでも、究極的な解にたどりつけるわけでもない、という難しい問いばかりだからです。


 さらに、こうした新しい科学技術を研究し実装化するにあたっては、その制度化、摂取速度の違いが、新しい分断や階層性、社会的スティグマを生み出してしまうこと、データ化される対象との新しい力関係とその偏在を生み出してしまうことも、これまでの歴史を振り返ると明らかです。

 そのため、研究を遂行する上での、そしてその科学技術が社会に浸透していくプロセスとその結果の透明性や公正性、包摂性、当事者性への配慮も欠かせません。


 想像×科学×倫理ワークショップは、ざっくばらんに研究者同士で、戸惑いやためらい、疑問を共有することからはじめたいと思います。研究を遂行するにあたって、人間についての、地球についての、社会についての、どのような想像をわたしたちはしているのか。「ほんとうに~すべきなのか/すべきでないのか?」「ほんとうに~はよいのか/悪いのか?」この問いを繰り返し、倫理の輪郭に触れることは、実は新たな可能性を研究者に開きます。


 倫理的思考は、想像と創造を生み出してきた営みでもあるからです。


 研究倫理は面倒くさい。ルーティン化した手続きとしても、あるいは問いが出ないのに頭の隅を離れず、模索しなければいけない問題としても、やっぱり面倒くさい。このワークショップでは、「面倒だけど面白い」研究倫理ワークショップの実践を試みます。

.「想像×科学×倫理」ワークショップ

グラフィックカタリスト・ビオトープ(Graphic Catalyst Biotope = GCB)

​「グラフィックレコーディング」とは、会議やカンファレンス、ワークショップなど、さまざまな立場の人たちが集まる場所で行われる議論や対話をリアルタイムにグラフィックで可視化する手法です。

私たちは「グラフィックレコーディングを手段として使って『場』をデザインする」ことが重要と考え、「グラフィックカタリスト(カタリスト=触媒)」という肩書をつけました。

「描くこと」で参加者同士や主催者を含む「場」を活性化させ、新たなつながりや発見を生み出す触媒となるために、私たちは活動しています。

松本 花澄

MATSUMOTO Kasumi

​人間中心設計専門家/グラフィックカタリスト。

DXデザイナーとして企業変革のデザインに従事。

佐久間 彩記

SAKUMA Ayaki

​​新規事業創出や組織変革などのサービスデザインに取り組み、グラフィックカタリストとしても活動中。

※ワークショップで作成されたグラレコはこちらで公開しています。

ワークショップの配信動画を公開しています。

ポスター

2021年度

第1回:「進化はどこにいく:地球Bに生きる?」(PDFダウンロード可)

2022年度

第1回:「多様性とは何か」(PDFダウンロード可)

2回:循環とは何か」(PDFダウンロード可)